「断熱耐震同時改修プロジェクト」の主旨(基本的な考え)
長い文章ですが是非読んでください
1.提案の理由と背景
(1)私たちの取り組み
この団体の正式名称をNPO法人新木造住宅技術研究協議会(以下略称新住協/代表理事・室蘭工業大学教授、鎌田紀彦)といいます。昭和63年の設立以来、高断熱高気密をすべての住宅の基本性能として、誰でもが良質でいい家を求められる社会環境づくりを理念とし省エネで快適な住まいづくりの普及と建設を全国各地で実践しています。平成16年NPO認証を得ました。構成メンバー(会員の所属団体)は地域工務店を中心として建材設備メーカー、流通販売店、市民等、九州から北海道まで総数677人(社)というグループです。右表は平成22年3月現在の会員数で、建築・設計の専門業者が500社を超えています。新住協で技術を学び、各々の地域の家づくりに生かしているのです。
(2)断熱リフォーム需要の高まり
私たちはこれまで次世代省エネ基準を超える高断熱住宅を3万戸以上建設してきたと推測していますその高断熱住宅は東北北海道の冬の暮らしを一変させたと自負しています。省エネで快適な室内環境の実現です。そして今、高断熱住宅の快適性を知った既存住宅の生活者の間から、「今住んでいる家が快適になるのなら断熱リフォームをしたい」という声が高まりつつあります。2010年の今冬は寒い冬だったこともあって、関東や関西地方のユーザーからも暖かくならないかという問い合わせを受けました。断熱改修需要の高まりです。
良質なリフォームは社会的にも大きな意義があります。住宅版エコポイントのPRも行き届いてエコリフォームに急激な関心が高まっている現在、これを機会として、正しい断熱リフォームがユーザーにも施工業者にも行き渡ることが肝要と考えます。
(3)断熱リフォームの課題
断熱リフォーム需要の高まりを象徴するような事例があります。(参考資料1を添付しました)
この工事は、室蘭工業大学鎌田紀彦教授指導の下、地元の会員工務店が施工しました。断熱と耐震の改修工事を、住みながら、工期は約50日、結果は成功したのですが課題が表れました。施主礼状(参考資料1)の末尾にある『結果には大満足しているが、もう少し安かったらみんなに勧めたい』です。工事金額が約850万円かかりました。この言葉はユーザーを代表する本意と受け止めなければなりません。
2.提案の内容
「もっと低コスト」にという課題から生まれたのが今回提案する「気流止め」工法による断熱耐震改修です。
(1)簡易な断熱改修方法−壁上下の気流止め工法
「暖房時、室内が充分に暖まらないばかりか壁内に結露を生じ躯体の耐久性も損なう問題の最大原因は壁内に気流が生じるから。そして、その解決策は「壁上下の気流止め」ということはこれまでの研究で周知の事実。したがって、既存住宅を断熱改修する最大ポイントは気流止めをいかに施工するかといえます。(外張り断熱でスッポリという方法もあるが屋根壁すべて新設という大規模さが残る)
そこで考えられたのが、圧縮グラスウール挿入という気流止め工法。問題となる主要箇所(図〔1〕の○印)すべてにポリエチレン製袋(繊維断熱材の防湿層になる)に150〜200MM厚の高性能グラスウールを入れ、空気を抜いて10〜20MMに圧縮、壁内の上下必要箇所すべてに挿入、元の厚みに復元させ気流を止める方法です(図〔2〕
〔3〕)。このとき、壁は必要最小限箇所だけ切り取れば、元に戻すだけという最小コストでそれまで入っていた断熱材の性能が生き返るという仕組みです。

この断熱改修のしくみは、工事が容易な割に、効果がきわめて大きい工法という評価を受け、その後北海道庁北総研と室蘭工業大学、NPO新住協の共同研究により、室工大鎌田教授の提案で耐震改修工法の実物大実験の成果に基づく、建防協の認定を受けました。道から耐震断熱改修工法としてリフォームマニュアル化、パンフが作成され、普及活動を北海道、NPO新住協が力して続けています。
(2)耐震改修も同時に行う
圧縮グラスウールを挿入するために壁切り取ると、柱と土台、桁、胴差しの接合点が現れます。これにより、土台、柱下部の腐朽被害検査をすることが可能になります。腐朽補修を必要とする箇所は壁をはがし部材の交換作業を行います。圧縮グラスウールによる気流止め施工後、柱、筋交い、土台の緊結、この部分に構造用合板と所定の釘打ちによって、壁上部、2階壁を必要に応じて外壁を切り取、気流止め施工及び合板打ち付けを行います。これにより既存の筋交いが所定の強度を実現します。また、外壁を剥がさなければならい場合は、気流止め施工後断熱材を補充し面材を貼って通常通りに(気層工法)仕上げる。
(3)付加断熱耐震改修工法
断熱材の厚さが既存グラスウールだけでは不足する場合又は耐震性能を更に向上させたい場合、モルタル外壁又はサイディング外装材を残したままその上から外装材を止め付け、木材内に断熱材を付加、サイディングを仕上げます。モルタ外壁は耐力面材として作用し、壁倍率2倍(建防協認定)になります。
3.提案の意義
(1)高レベル少量よりも中レベル多量の改修推進以上のような断熱耐震同時改修の工事金額は、その工事だ
け(断熱耐震改修に該当する部分)でみれば最小150万円〜300万円の範囲内で施工可能です。(100〜130m2規模程度)このくらい金額ならより多くの人が可能な範囲ではないかと推察します。(既存開口部の性能等で幅は拡大します)
今、築20〜30年経過した住宅の屋根や壁の新装工事が盛んに行われています。これらの工事に上記金額(普及可能な価格−大衆性)を加えて多くの住宅の断熱と耐震性能向上を促進することに意義があると考えます。
この工法がより一般的に普及しやすいと考える理由は次の通りです。
〔1〕ユーザは住みながら比較的短期間で施工可能である。
〔2〕屋根、壁の改装時に行えば間も工事費もさらに低減できる。
〔3〕モルタ壁等残す場合は廃材を最小限に抑制できる。
〔4〕快適生活を損なうよ資材機器が露出しない。
(2)いい家を住み継ぐサポータとしての地域工務店の技術
低迷を続ける経済環境、始まっている地方人口の減少等々、住宅を巡る環境のこれまでとこれからは大きな様変わりが予想されます。それらを背景に、これからは、今ある家を永く住み継ぐという思想が生まれてくるものと考えます。
快適省エネは永く住み継ぐための一つのキーワード。そのとき、鍵を握るのは地域工務店の幅広い技術、それは建築技能と同時に断熱気密の技術でもあります。
この工法を実践するとで単なる新装ではなく意義ある(断熱耐震)リフォームの普及と地域工務店の技術向上に貢献できると確信しています。同時に、これまで20〜30年経た住宅を更に20〜30年長持ちさせることで省エネ省資源にも大きな意義があると考えます。

断熱耐震同時改修プロジェクト
改修後の性能
断熱性能 → 次世代省エネ基準以上(北海道のA工法はQ値1.9W/m2Kです)
耐震性能 → 一般診断法 評点1.0以上
その他、省エネ、バリアフリー、防耐火にも配慮することに待っています
※ 断熱性能と耐震性能を改善させるのですから、家全体の改修が前提になります。
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